SONY

フォトグラメトリで3Dモデル化した世界遺産の島をインタラクティブな立体映像でダイナミックに体験 - 前編

#Photogrametry #フォトグラメトリ #活用事例 #クリエイターTips

空間再現ディスプレイ/Spatial Reality Displayを活用しているクリエイターのコンテンツ制作Tips 第4弾になります。今回は、広範囲のデジタルアーカイブのコンテンツ制作を得意とする太陽企画株式会社の大西悟さん、阿久津敏さんの「デジタルBOX軍艦島」のコンテンツ作成とより魅力的に表示するノウハウを語っていただきます。

前編では、フォトグラメトリの作成手法の紹介、後編では実際に空間再現ディスプレイに魅力的に表示するTipsを紹介いただきます。

それでは大西さん、阿久津さんのTips解説をお楽しみください。

「デジタルBOX軍艦島」:軍艦島資料館 VR多言語解説整備事業

「デジタルBOX軍艦島」は、文化庁の令和5年度文化財多言語解説整備事業で採択された事業の一環として制作されたELF-SR2で体験するコンテンツです。長崎県長崎市野母町にある軍艦島資料館が事業を統括し、クリーク・アンド・リバー社を中心に株式会社ハコスコ、NPO法人 J-heritage、電鉄商事株式会社DTSコミュニケーションズ、株式会社シエルイノベーション、太陽企画株式会社で共同制作いたしました。長崎市の観光政策課の協力のもと2023年11月の3日間でSony α7RV及びドローンで撮影した2万枚以上の写真、またレーザースキャン計測による点群データをもとに制作いたしました。軍艦島資料館の副館長安達氏曰く「最西南端の町で最先端なことをした」という思いが込められており、長崎の歴史と文化をより身近に感じることができるコンテンツに仕上がったと考えております。

デジタルBOX軍艦島を体験する人の画像

デジタルBOX軍艦島の画像

【長崎市軍艦島資料館 デジタルBOX軍艦島】

今回3Dモデル化した端島(軍艦島)の概要

長崎市の端島(通称・軍艦島)の端島炭鉱は、世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産のひとつです。軍艦島はもともと南北320メートル、東西120メートルの小さな瀬と岩礁で、1870年に石炭の採掘が始まり炭鉱開発と共に6回の埋め立てにより3倍に拡張されました。明治末期、端島炭鉱は八幡製鉄所向けの原料炭生産地となり、大正期の1916年以降に多くの鉄筋コンクリート造の高層住宅が建設され、1960年代には東京以上の人口密度を有していました。1974年1月15日の炭鉱閉山にともない、同年4月20日には無人島になりましたが、2015年に端島炭鉱の明治時代の遺構が世界文化遺産に登録されました。

3Dモデルの軍艦島全体の画像

3Dモデルの軍艦島細部の画像

【フォトグラメトリで3Dモデル化された軍艦島】

フォトグラメトリ撮影について

フォトグラメトリは、被写体を様々な角度から撮影して、その写真を元に3Dモデルを生成する技術です。軍艦島は南北に約480メートル、東西に約160メートルあり、南北に細長く島の周囲はコンクリートの護岸で覆われている島で、この約6.3ヘクタールの広さがある軍艦島を3Dモデル化するためにドローンによる空撮とデジタルカメラ(Sony α7RV)を手持ちで移動しながら撮影、また時間が許す限り島内全域をくまなくレーザースキャンで計測を行いました。ドローンはDJI M300RTKとDJI Mavic 3 Proを使用、M300RTKで格子状の形で自動撮影を広範囲に行い、ランドマークとして知られる建物や有名スポットは、Mavic 3 Proで近接撮影を行いました。M300RTKでは約7千枚、Mavic 3 Proは約6千枚撮影しています。地上での撮影はSONYのα7RVとα6000を使って撮影を行いました。α7RVでは外観と建物内部の写真を約1万8千枚以上撮っています。

軍艦島全体の画像

軍艦島内部の画像

【DJI M300RTKで広域の空撮を行い、Mavic 3 Proで近接撮影を行いました】

軍艦島内部の画像

軍艦島外側の画像

【Sony α7RVとα6000を歩きながら島内を撮影していきました】

レーザースキャナーでの点群計測について

レーザースキャナーを用いた点群計測は、高精度で詳細な三次元データを取得できます。これにより、対象物の正確な形状やサイズをデジタル化できるのです。また対象物に直接触れることなく計測が可能なので、壊れやすい遺物や危険な場所の計測が安全かつ効率的に行えました。今回は、島内の約150カ所のスキャンを行いました。

軍艦島全体のスキャン画像

軍艦島一部のスキャン画像

【島内の約150カ所をレーザースキャンしました】

フォトグラメトリ制作

フォトグラメトリ作業にはRealityCaptureというアプリを使用しました。撮影素材をアライメントする作業に約1週間、建物内部の写真を別に分け、外観の素材だけでアライメントした写真を約2万枚以内に抑えました。これは写真の枚数が多過ぎるとPCのメモリーが不足してアプリがフリーズしてしまうためです。コンポーネント(写真の集団)が分かれた場合はコントロールポイントを使って合体します。(これはかなり骨が折れる作業です)こうして写真のアライメント作業が終わるとレーザースキャナーのデータとの合体を行いメッシュ化計算に入ります。こうしてできたオリジナルのモデルデータは約3億ポリゴンになりました。

フォトグラメトリ制作画像

フォトグラメトリ制作画像

【ドローンと地上で撮影したカメラの写真をコントロールポイントを使って合体します】

フォトグラメトリ制作画像

フォトグラメトリ制作画像

【写真のコンポーネントとレーザースキャンデータを合体した後にメッシュ化計算を行います】

ここまででフォトグラメトリのモデル制作が完了しました。
後編ではこのモデルをELF-SR2に映し出し時のTipsを紹介します。
フォトグラメトリで3Dモデル化した世界遺産の島をインタラクティブな立体映像でダイナミックに体験 - 後編


株式会社太陽企画では本記事のような、デジタルアーカイブコンテンツの制作依頼を受け付けております。ご興味ある方は以下にお問い合わせください。

Tech Lab

https://taiyo-techlab.jp/

コンタクト

techlab-info@taiyokikaku.com

大西さん X (旧Twitter)

https://x.com/2012apocalypsis

“α” はソニーグループ株式会社の商標です。
© 2024, Epic Games, Inc. Epic Games、Epic Gamesのロゴ、RealityCapture、RealityCaptureのロゴは、米国およびその他の国々におけるEpic Games, Inc.の商標または登録商標です。