今回の撮影地はスペイン南部のグラナダ市にある、アルハンブラ宮殿です。

宮殿とは言いますが、その敷地には官庁や学校、住宅や墓地まで備わっていた城塞都市です。長い年月が流れる中、異なる時代の異なる建築様式が築かれ現在の姿になりました。その姿は「スペインにおけるイタリア様式の傑作」、「アンダルシアの宝石」ともうたわれており、多くの人々を魅了し続けています。アルハンブラ宮殿眼下に広がるグラナダ最古の町、アルバイシン地区もまた世界遺産地域です。

定点撮影は、そのアルバイシン地区側からアルハンブラ宮殿がそびえる丘に向けたアングルとなっています。RX100M2で撮影したメイキング写真に、その位置関係が分かりやすいものも掲載しています。

今回のアングルは、日中に逆光線気味が続く強コントラストを選んでいます。このタイプは、僕としての好条件がかなり揃わない限り撮影しません。しかし、この時期のアンダルシア特有の超快晴が続き、撮影が止まってしまいました。天気予報でもこの先4、5日は快晴の予報。実際の天気が快晴だと、定点には暗雲がたれこみます。折れそうなこころを奮い立たせ、朝夕に祈りを捧げました。祈りが天に通じるかどうかはさて置き、こうした八方塞がりの事態を前に、人は祈ることしかできないものです。自分がブレないためにも。

権力争い…。

侵略…。

異文化との交流が育んだ英知…。

愛…。

波乱に満ちたその成り立ちをイメージし、光で描く…。

強く願い、遺しゆく価値ある一瞬を待ち続けます。

イメージの光、その出現を願い迎えた5日目の夜明け、そこには予報に反し、世界遺産上空に次々と現れる表情豊かな光がありました。「待つ」ということは、そこに希望があるという意味。希望があるということは、そこに信じるこころがあるという意味。胸中に湧く想いと共に、シャッターを切り続けました。

また、世界遺産となっているアルハンブラ宮殿内部を特別に撮影させていただきました。歴史的文化的価値のある建造物を遺す観点から、保護が大変厳重なため、誰もが容易に撮影出来るわけでは無い被写体です。細心の注意を払いながら、また、こうした遺産の素晴らしさを光で伝えるメッセンジャーとしての責務を感じながらワンカットごと、丁寧に写し撮っていきました。イスラム建築最高傑作と言われる内部の写真、天井装飾も合わせてご覧いただきたいと思います。

この宮殿特別撮影にあたり、尽力いただきましたPatronato de la Alhambra y el Generalifeと、日本語情報センターに厚く御礼申し上げます。