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「マジカルミライ」クリエーターインタビュー③

2021年11月に幕張メッセで開催された「マジカルミライ2021」企画展に、「空間再現ディスプレイ(Spatial Reality Display)」(以下SRD)を出展しました。
SRDを活用した新しいインタラクティブな体験をお届けするため、 xR/VRの業界で活躍中の6名のクリエーター様にコンテンツを制作していただき、展示を行いました。

制作したコンテンツの見どころ、制作のコツなどについて、それぞれのクリエーターにお伺いしたインタビュー記事を数回に分けて掲載します。SRDの活用方法、新しい体験の参考になれば幸いです。

今回は「ミクさんと扇風機で涼むやつ」制作者のウダサンさん、とみこさんへのインタビューを紹介します。

作品名:ミクさんと扇風機で涼むやつ

クリエーター名:

ウダサン @udasan_koubou

Unity / VR エンジニア。
株式会社ハシラスで VR のアトラクションや体験を作っています。
個人の「ウダサンコウボウ」でも立体視や VR の作品を制作・公開しています。

とみこ @tomiko_kitchen
電子工作とラジオと小豆餡が好きな人。
普段は鉄道会社で通信設備の運用保守をしています。かわいい小さな機械たちをもっと身近な存在にしたいと思っている。

Q1) 作品のコンセプト、見どころを教えてください。

「ミクさんと扇風機で涼むやつ」は、ミクさんと同じ空間で一緒に扇風機で涼むという作品です。

> Twitter 動画リンク
https://twitter.com/udasan_koubou/status/1453995017391931392

マスター(プレイヤー)が操作した現実の扇風機による風が、画面の中にも入ってミクさんの髪を揺らすので、ミクさんと同じ風を感じることができます。 ミクさんと一緒に涼みに来ている、という空気感とともにゆったりと楽しんでもらえたらと思っています。

これは結構衝撃でした。まさか「扇風機」がインタラクティブデバイスとして登場するとはまったく想像もせず... SRDで実現したかった「バーチャル」と「現実」との融合がこんな形で行われるのかと感激しました。SRDの中の箱庭的な部屋感や配置のバランスもばっちりでBGMの音も涼しく心地よく、夏になったら部屋に飾りたくなる作品だなと思います。


Q2) クリエーター(開発者)視点で特に工夫した点、こだわった点など教えてください。

扇風機の強弱を Unity で取得できるようにするため、特殊なハードウェアを作ってシリアル通信しています。特殊といっても、扇風機は無改造、市販品の組み合わせ、はんだ付けなしという縛りプレイで設計したため、スケールできるようになっています。
風によるミクさんの髪の揺れが理想的になるように、揺れものに対して独自に計算した風の力を外から与えています。アニメーションや IK も併用しつつ、ミクさんが振り向くなど動いても揺れものが破綻しないように調整しています。
より自然になるよう、揺れものはミクさんの髪だけでなくスカートなど服にも設定してあります。また、SRD は上下の視差にも対応しており、下から覗き込むこともできるデバイスです。そのため、あらゆる風とあらゆる角度に対して鉄壁であるように作りました。

条件次第では部屋内の小物や家具も強風で吹き飛ぶといった、ちょっとしたおまけも用意しています。

こりんさんからも指摘されましたが「揺れ感」はSRDの重要な表現なんですね。
扇風機のボタンを押すごとに切り替わる3段階の風にあわせたインタラクションは楽しいし、押すスピードによってインタラクションがちょっと変わるのも面白い仕掛けだなと思いました。


Q3) SRDを使いこなす上でのコツがあれば教えてください。

SRD の表示領域の中でも、とくに物理的なディスプレイから空中に飛び出してそこにあるかのような視覚効果が得られるのが、手前の上部です。

オブジェクトの配置設計の際には、中央から手前寄りに背の高く大きいオブジェクトを配置すると、立体感を引き出しやすいと思います。

今回はミクさんを常に座らせつつ、座った状態で画面の高さいっぱいになるようにカメラを寄せています。こうすることで、立ったミクさんの全身を映す場合に比べて倍近くミクさんを大きく映すことができます。

また、ミクさんのツインテールが強風でなびく際には、SRD の画面手前の空間からさらに手前に飛び出して見えるように、画面手前でのクリッピングをオフにしています。

クリッピングをオフにすると目に負担がかかったり、見る角度によっては破綻しやすくなるため多用はおすすめできませんが、瞬間的に使うなど使い方次第では迫力が出ておもしろいと思います。

ほかにも

● そこにある感を高めるにはリアルタイムシャドウも効果的
● 手前の左右も立体感が高いのでロゴなど何か出しておくとよい(左右端すぎると破綻しやすいのでマージンは取る)
● 顔認識した際にキャラクターがプレイヤーを見ると、キャラクターがこちらを見つけてくれた気分になってうれしい
●顔認識はプレイ中に外れるほうが普通(プレイヤーが大きく顔を動かしたり、画面を撮影しようと構えたスマホで顔を隠したり)なので、外れても進行するように作っておくのがおすすめ

などを気にしておくと、SRD の良さをいっそう引き出せるのではと思います。


その他メッセージや今回のイベント参加の感想など一言あればお願いします。

今回マジカルミライの現地に遊びに行って、みんなミクさん好きなんだなと改めて思いました。そんなみなさんに体験してもらえてうれしいです。ありがとうございました!


ありがとうございました。


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※ オブジェクトの配置やクリッピングの使い方については、こちら でもご紹介しています。